





小中高等学校におけるモビリティ・マネジメント教育の普及に向けての支援事業
モビリティ・マネジメント教育とは
1.モビリティ・マネジメント教育とは
モビリティ・マネジメント教育(Mobility Management Education)とは、われわれ一人ひとりの移動手段や社会全体の交通流動を 「人や社会、環境にやさしい」という観点から見直し、改善していくために自発的な行動を取れるような人間を育成することを目指した教育活動を意味します。
「モビリティ・マネジメント教育」は、まだスタートラインに立ったばかりです。 これからみなさんの知恵を絞って、新しい教育実践を作っていかなければなりません。 ただ、みなさんが今まで実践してきた授業を振り返ってみると、このモビリティ・マネジメント教育につながるものが少なからず存在するはずです。 クルマやバス・鉄道、道路や港、こういった素材を教材化し、授業を展開してこられた先生も少なくないでしょう。 われわれは、そういったモビリティ・マネジメント教育につながる芽を大切にしたいと考えています。
2.モビリティ・マネジメント教育の授業づくり
モビリティ・マネジメント教育を学校において実践する場合には、現在のところ、次のよう授業を構想することができます。
- 地域の電⾞・バスなど(公共交通)について考える学習
- クルマ社会の問題(渋滞・環境問題など)について考える学習
- まちづくりと交通について考える学習
- 交通を通じて⾃分たちの住む地域やふるさとについて考える学習
- その他、まち・環境・公共(政治や公⺠的資質、シティズンシップなど)と交通に関わる、様々な学習
3.モビリティ・マネジメント教育を実施するにあたって
まず、学習指導要領と教科書を開き、どの教科・領域のどの学年及び単元で、モビリティ・マネジメント教育が実践可能なのを考えることが先決です。
また、具体的に単元を構想する際には、今日ではすでに多くの教材が用意されていますので、それを有効に活用しながら、授業を実施することをお勧めします。
モビリティ・マネジメントとは
1.モビリティ・マネジメントとは
モビリティ・マネジメント(mobility management)とは、「モビリティをマネジメントすること」を意味します。この「モビリティ」という言葉は、「移動や交通」ということを意味します。
この「モビリティ」という言葉は、「移動や交通」ということを意味します。たとえば、「私のモビリティ」といえば、「普段の生活の中で、私はどうやって移動しているのか」という「私の日々の移動の様子」を意味しますし、「この街のモビリティ」といえば、「この街では、どんな交通が毎日おこなわれているのか」という「この街の日々の交通の様子」を意味します。
ここでいう「マネジメント」とは、「いろいろな工夫を重ねながら、少しずつ状況を改善していく」ことを意味します。
つまり、「モビリティ・マネジメント」とは、「一人ひとりの移動の様子や、街や地域の交通の様子を、いろいろと工夫を重ねながら改善していく取り組み」のことです。
2.一人ひとりの「気づき」を促すモビリティ・マネジメント
私たちの移動は、私たちの社会全体にも色々な影響を与えています。
たとえば、「クルマ」を使うとたくさんのCO2が出ます。でも、多くの人々はこのことを知らずにクルマを使い続け、地球温暖化を促進してしまっています。
あるいは、たくさんの地域でバスや鉄道が「廃線」になっていますが、たとえば、地域の人々がたった月に一回だけでも利用すれば廃線にならずに済んだ、というような路線は日本中にたくさんあります。こう考えると、一人一人が、こうした事に気付き、自らの「移動」(モビリティ)を少しずつでも見直していくということは、社会にとってとても大切なことなのです。モビリティ・マネジメントは、そうした一人一人の「気づき」を促し、一人一人が少しずつでも行動を変えるという「小さな実践」を促し、それらを通じて、地域全体の交通を善くしていこうとする取り組みなのです。
教科・領域との関連性
モビリティ・マネジメント教育では、「交通」がキーワードとなります。なお、交通とは、人や乗り物が行き来することや、人や物資 が移動することを意味します。 その観点から、学習指導要領を見てみると、さまざまな箇所で単元開発が可能であることに気付くと思います。 特に、社会科・理科・家庭科といった教科学習、さらには、特別活動や総合的な学習の時間において、その可能性が高いと言えます。 次の表1は、小学校社会科を事例に、その可能性を考えてみた結果です。「内容及び単元事例」の欄には、まず学年毎に学習指導要領に記載された「内容」を記し、 ついでその後ろに構想可能な「単元事例」を示してみました。このように考えてみると、発想次第で多くの単元において、 モビリティ・マネジメント教育は実践可能であることがわかると思います。
小学校社会科におけるモビリティ・マネジメント教育と関連性が強い内容
学年 | 内容及び単元事例 |
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第3学年 第4学年 (地域学習) |
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第5学年 (国土・産業学習) |
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第6学年 (歴史・政治学習) |
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ここでは小学校社会科しか示せていません。そして、他教科・領域でも、教育内容の特徴を細かく検討すれば、さまざまな箇所で実践可能であることを発見できるはずです。特に、総合的な学習の時間は比較的自由に単元を開発できるため、地域の特色を生かしたモビリティ・マネジメント教育実践には適しているでしょう。
モビリティ・マネジメント教育と関連性が大きいSDGsの目標・ターゲット
また、SDGsについては下の”目標”・”ターゲット”がモビリティ・マネジメント教育と関連が大きく、SDGsを学習するうえでも効果的です。
目標 | ターゲット | モビリティ・マネジメント教育と関連する教科・単元 |
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3.6 2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。 | ●小学校5年 社会 単元:我が国の工業生産 ●小学校5年 保健 単元:けがの防止(交通事故の防止) |
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7.2 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 | ●小学校5年 社会 単元:我が国の工業生産 ●小学校6年 理科 単元:物の燃え方と空気 ●中学校 理科 単元:運動とエネルギー(エネルギーの変換と保存) ●中学校 技術 単元: さまざまな国際問題(地球環境問題)(資源・エネルギー問題 限りある資源と環境への配慮) ●高校 公共 単元:経済のグローバル化『資源・エネルギー問題』 |
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9.4 2030年までに、資源をよりむだなく使えるようにし、環境にやさし い技術や生産の方法をより多く取り入れて、インフラや産業を持続可能なものにする。すべての国が、それぞれの能力に応じて、これに取り組む。 |
●小学校5年 社会 単元:我が国の工業生産 ●中学校 技術 単元:私たちの生活とエネルギー変換の技術 ●高校 地理総合 単元:現代世界の系統地理的考察(環境問題)(資源・エネルギー) |
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11.2 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者、および高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。 | ●小学校3年 社会 単元:身近な地域や市区町村の様子 単元:市の様子の移り変わり ●小学校4年 社会 単元:都道府県の様子 ●小学校5年 社会 単元:我が国の工業生産 単元:情報化した社会と産業の発展 ●小学校6年 社会 単元:我が国の政治の働き ●中学校 地理 単元:日本の地域的特色と地域区分 (交通・通信から見た日本の特色) ●中学校 公民 単元:財政と国民の福祉(財政の役割と課題)(少子高齢化と財政) ●高校 地理総合 単元:資料から読み取る現代世界(交通の発達) |
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12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 | ●小学校6年 理科 単元:地球に生きる(人と環境とのかかわり・環境を守る) ●中学校 家庭 単元:責任ある消費者になるために(省エネルギーと持続可能な社会)(持続可能な消費生活を目指して) |
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13.2 気候変動への対応を、それぞれの国が、国の政策や、戦略、計画に入れる。 | ●中学校 公民 単元 さまざまな国際問題 (地球環境問題)(資源・エネルギー問題 限りある資源と環境への配慮) ●高校 公共 単元:経済のグローバル化『資源・エネルギー問題』 |
地域社会との連携方法
また、モビリティ・マネジメント教育を実践する場合には、地方公共団体や交通事業体(鉄道やバス会社など)との連携が必要不可欠です。できれば、関連団体・組織と事前に連絡を取り、相談しながら単元開発を進めることが重要です。今日では、さまざまな関連団体・組織が積極的に出前授業を実施するようになりました。それらを活用することも、授業を成功へと導くためには有効です。